フロントスタッフ趣味語り 阪和線の歴史 第11回
今回も当館フロントスタッフで鉄道に詳しい者が語らせて頂きます。
前回のロコ1000形の続き
- 制御器
主制御器は東洋電機製の電磁弁制御による単位スイッチ式、運転台に設置された
マスコン(主幹制御器)は同じく東洋電機ES-40-Aで有る。総括制御可能で有り、
発電・回生ブレーキ機能を備えていたが、これ等の機能は
国有化後に機器の標準化を行った際に喪われている。
尚、戦時形のロコ1004は車体のみならず機器面でも簡略化が図られており
発電・回生ブレーキ無しとなっている。
- ブレーキ
空気ブレーキは当時の機関車用で一般的なEL14制御弁を使用しており、
発電ブレーキ・電力回生ブレーキは運転台右側のマスコン、空気ブレーキは
左側のブレーキ弁で個別に操作される構造で、同時代の他の日本製
回生ブレーキ搭載機と同様に、ブレーキの電空同期機能は備わっていない。
- 集電装置
ロコ1001-1003は東洋電機製造TDK-C-2菱枠パンタグラフを2基搭載
して竣工している。 電流量の観点では本形式の場合パンタグラフ1基搭載
で充分であり、パンタグラフ2基搭載は離線に伴う回生ブレーキの失効対策
として実施されている。 此の為発電・回生ブレーキを搭載しないロコ1004については
、ロコ1001-ロコ1003と同じTDK-C-2を1基のみ搭載して竣工している。
- 台車
動輪径1,220mmの此の種の電気機関車としては比較的大型の車輪を備え、
各台車の両端梁に連結器及び台車間を結ぶ中間連結器を其々備える。
ロコ1001・1002の台車は、当初は軸箱を重ね板ばねで支持し、是を側枠中央
の大きな重ね板ばねで均衡させるイコライザー式機構を採用している。
この構成は棒台枠による台車枠そのものを含め、戦前の鉄道省が製造した
ED16形以降の制式電気機関車で採用していた物と類似点の多い構造で
あった。だが、是は高速運転には適さず動揺が著しかった為、増備機で
あるロコ1003では軸ばねについて軸箱の両脇にコイルバネ式へ変更、
枕ばねを揺れ枕付とした上で、各台車の軸距を2,700㎜から2,900㎜へ延伸し
高速運転時の揺動特性と直進安定性を改善している。
ブレーキを駆動するブレーキシリンダーは、ロコ1001・1002については各台車
の端梁に取り付けられた連結器の緩衝器直上に左右各1基のシリンダーを
並べて搭載する、という独特の構成をしているが、ロコ1003では此の方式は
踏襲されず左右の側梁に其々振り分け搭載する一般的な構造に変更されている。
ロコ1003での軸箱支持機構の設定変更により良好な走行特性が得られた事
から、ロコ1001・1002についても後述の駆動系改修と併せて1935年3月2日付
で台車の大改造が実施される事となり、軸距こそ変更はされなかったものの、軸ばね
と枕ばねの双方をロコ1003と同様に変更している。
尚、是等の改修工事の施工後に竣工したロコ1004の台車については、ブレーキワーク
を含めロコ1003用台車の設計が粗そのまま踏襲されている。
今回はここまで、次回はロコ1000形の運用について語ります。